リベンジメロン

2020.5.23開始。noteから引っ越してきました。

ぶんけい『腹黒のジレンマ』感想

YouTube視聴履歴をまとめてばかりいるので、たまには少し違う話を。

 

5月初旬、ぶんけいさんが本を出版するとTwitterで知りました。5月いっぱい購入を悩みました。

私もぶんけいさんと同じ1994年生まれです。

同級生の男子の本を1,320円も払って読むのか?

どうも癪でした。書店で読破したあと、買わずに一度帰宅したくらいです。

 

帰宅してから考えました。

本当にどうでもよかったら、わざわざ近隣の書店に在庫がないか毎日毎時間検索しないし、店頭で手に取ったとしても読破しないはず。きっとこの本には、最後まで読ませるだけの何かがあったわけです。

 

食器洗いをしながら、頭の中に感想が次々と浮かんできて、早く感想を書きたい! と思いました。普段は書きたい欲が出てきてもすぐに忘れられますが、今回はどうしても熱が収まらない。久しぶりにワクワクしました。

Twitterで書ききれる量ではないからブログにしよう。本を手元に用意して、確認しながら書こう。

 

そういうわけで、再度書店を訪れて購入しました。

 

まずは出版社の話から。

装丁を見たとき、「うわ~、KADOKAWAから出版されるタレント本らしいな」って思いました。こういう本をよく出しますよね、KADOKAWAって。既視感。触ってなくても紙の質感が分かる。それに、装丁を見ただけで、文体もなんとなく想像できる。インスタライブでちょびっと朗読されたとき、やっぱり「らしい」文章って思いました。

KADOKAWAってきっと、その人の素直な表現を生かす出版社なんですね。等身大を認めてもらえる出版社。SNS上のインフルエンサーを取り扱うからか、時流に乗った表現を残すことでSNSでの姿と文章が地続きになるよう配慮されている。

余談ですが、数々の写真を見ていると、撮影時の風景が浮かんできて恥ずかしくなる(※妄想ですよ)。私が撮られるわけでもないのに、くすぐったい。P188で手に持ってるのはどこの文庫本だろう、気になります。

 

さて、本の内容にうつります。

ネタバレしますので、ここで区切ります。

 

 

 

好きな部分を、私の話をモリモリしながら拾います。このブログには隙しかないから、自分語り放題なんですよね。

 

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面倒なことに、納得しないと前進できないらしい。「知るのが楽しい」というよりも、「腑に落ちたい」。少しでも違和感があれば、説明を求めてしまう。(P30)

「腑に落ちたい」に強く共感した。

 

 

どのクラスにも(略)目立つなぁっていう生徒がいた。ぼくは、そういう人の横にいたり、いろんなグループを横断したりしていたタイプだ。教室でいつもひとりで過ごしている子に対しても、その子さえ拒まないのであれば、話してみたかった。「誰も仲よくなれないこの子と、どうやったら仲よくなれるんだろう?」という興味があった。(P32)

たしかに、ぶんけいさんはグループやクラスメイトを軽やかに横断していけそう! クラスに1人はいるのよ、こういう自由な人。自由にふるまっても大丈夫な、瀬尾まいこ『温室デイズ』の斉藤くんみたいな人が。

ちなみに私はひとりで過ごすタイプでした。ぶんけいさんと同じクラスだったら軽率に恋をしていた可能性がある。

この文章のやさしいところは、「誰も仲よくなれない」の表現。私は何度もこの箇所のひらがなを読み、「誰とも仲よくなれない」や「誰とも仲よくない」など、批判的な書き方をしていないことに驚いた。人間が好きだと話すぶんけいさんならではの言葉選び。過去の自分が救われたように思う。

 

 

淡路島出身でよかったなと思うことは(略)、都市部ではない場所で生活する人々の行動原理がある程度、理解できること。(略)そもそも都市部と地方では同じアプローチが有効じゃないということも感じる。(P34)

田舎暮らしの者として、なんか嬉しい。書店で読んだときから嬉しかった。取りこぼされてないんだな、と思った。なんなら本書が発売日から1週間以内に店頭に並び、手に取れたことすら、ぶんけいさんが地方を忘れていないことの証左なのでは? と思ったくらいだ。

 

 

たとえば家族が急に倒れたら、実家で何か起こったら、駆け付けても間に合わないかもしれない。(略)リスクをふまえ、地元から離れてでも、ぼくは東京で生きていく。その覚悟を持って、目の前の仕事に向き合ってきた。(P35)

私は大学卒業・就職を機に、地元(宮崎)から出ようとしていた。しかし福岡での就活帰りに熊本地震が発生。緊急地震速報が一斉に鳴り響くバスの中で「家族から遠く離れた場所で生きること」に強い不安を覚え、地元に残る選択をした。様々なことを勘案したうえで東京で生きる覚悟を決めたのは本当にすごい。尊敬する。

 

 

(P50~51)

書店で一度目に読んだときは気づかなかったけど、ページとページの間、めっちゃ凝ってますね! あんまり開くと本が傷むからほどほどに。こういうの好きだなぁ。

 

 

(P59)

左下の文字のグラデーションに見入ってしまった。そこでようやく右上の■の色をまじまじと見つめる。この色って、小学校の絵の具セットにある色では表現できない色だよね。同じ色の絵の具を持っている子がいて羨ましかったのを思い出した。好きな色。

 

 

(P70)

最初の一行、書店なのにめちゃくちゃ笑った! ほんと、出てた出てた。

 

 

(P81~P95)対談 アンビバレントな関係

とても読みごたえがある対談。感想はあまり浮かばない。いい意味で、内容を咀嚼するのに時間がかかりそうです。

(P81)

3人の名前の並び順がごっちゃごちゃだな、ああでもゲストを先に書くのは当然か、さすがに次のページでは整理されているよね? とそわそわする。

 

(P83)

真っ先に左下のプロフ読んで安心。思えば、扉(P81)で本書の主人公を中心に据えるのも当然の話ですよね。なんか勝手に焦ってしまいました。

 

(P90)

まだ対談続いてる!? 

 

(P94)

上段12行目「嘘の寿命は短いから」にハッとする。こういう言葉をこぼさずに書き留めるのは偉い。この対談で一番刺さった箇所。

 

 

(P100)

ぶんけいさんが大学中退していたことを初めて知った。それで結果を出しているのだから、とんでもない人だ。

 

 

選択を後悔したとき、誰のせいにする?(P109)

社会人4年目だけど、何度も読んで考えたいなと思うページ。

私は今でも自分の人生を迷っている。職場の同僚からも「もっと一人で没頭できるような仕事が向いているんじゃないか」「好きなことって何? そういうのを仕事にしたら?」と言われる。安泰と評される会社にいるけど、一生この職場で生きていく気はしていない。

正直、もっと他のことに挑戦してみたい気持ちがある。ただ、どこに向かって一歩踏み出せばいいかを迷っているだけで。

自分の人生なのだから、自分でハンドル握らないとね。それができる歳になったのだし、良いも悪いも自分で引き受けて、生きていきたい。

これまで幾度となく考えているけど、今回の読書をきっかけに、本気で考えるようになった。日常生活に追われて忘れがちだけど、まずはリビングのテーブルに本を置いて、いつでも今のこの気持ちに立ち戻れるようにした。

 

 

ぼくにも漠然とやる気が起きないみたいなことはある。普通にある。いわゆる、モチベーションが上がらないというやつだ。(略)

「やる気が出ない」理由を無理やりにでも探し出して、こじつける。(略)自分をだます嘘でもいいから、とにかく理由を探してみる。(P110)

 こんなに日々挑戦している人にもやる気が起きないことってあるんだ! 彼も普通の人間なんだな、いい意味で。嘘のない文章だと思った。

モチベーションが上がらないときの対処法って、巷の自己啓発本には「とにかくがむしゃらに動く! やればおのずとやる気は出る!!」と書いてあるし、脳科学的にもそうだと聞くけど、それでやる気出なかったらどうすんの、微妙なものが出来上がって修復が面倒よ? って聞きたくなる。本書では建設的で取っつきやすさのある対処法が紹介されていて、説得力があった。

 

 

だけどみんなで洋服を選んで、とんでもない柄の服を着て笑い合った思い出は、あのときの洋服みたいに鮮やかに輝いて、心に刻まれている。(P121)

 クサい文章。転記しながら暑くなってきた。このひとつ前の文章まで読んだとき、「くるぞ、くるぞ……」って身構えてしまった。J-POPみたいなクサさ。うーん、恥ずかしい。これもぶんけいさんの持ち味なのか?

 

 

(P132~)

恋愛の話。自分に経験がなさすぎて、内容を消化できるのに数年かかりそうなので、「共感した」ということだけを示しておきます。

 

 

(P141~)

ぶんけいさんも日プを見ていたのか!!!!!(当然だけど、次ページまで読み進めても推しメンの名前は載ってなかった)

私も、木曜は帰宅後チャキチャキ家事を済ませてスマホに貼りついてました。最終回(地上波生放送)は有給使って早退したくらいです。

ぶんけいさんも誰かに投票したんだろうか。したんだろうな。誰に投票したんだろう。気になる!

 

 

(P149最終行から4行目)

内容ではなく、文字をパッと見たときの印象の話をしたい。

縦書きの書籍で「!」マークをいくつも並べると、点線や伸ばし棒のように見える。この文章表現の意図って、勢いのある感情を読者に伝えることにある。でも、縦書きでこの表記をすると、間延びした印象を与えてしまう。少なくとも私は、ぼんやりとして見えるなと思う。

改善案は浮かばないけど、強いて言うなら、「!」マークを右に傾けますか? ……イメージしたけど、ちょっと古いですよね。笑

 

ちなみに『ものすごい愛のものすごい愛し方、ものすごい愛され方』を思い浮かべながら書きました。どちらもKADOKAWAから出版されたものなんですね。もしかするとKADOKAWAと私との相性かもしれない。

 

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普段はどれだけ読書しても感想文は書かないんです。読書と同じくらい、執筆も好きなのに。でも今回はどうしても書きたくなった。ずっと目を背けてきた自分の「好き」に向き合ってみようと思った。これだけ真剣に人生を模索している人の本を読んだら、それは感化されます。

 

とても楽しかったです、感想執筆。至福のひとときでした。この記事を書いているあいだ、時間が飛ぶように過ぎましたが、日常生活の何よりも楽しかったです。

 

そうだった。私は文章について思い巡らすことが好きだった。読むのも書くのも両方。

うまく書けなくて悔しくて、そんなのは好きじゃないとうそぶいたこともあるけど、本当は書くことだって好きで、楽しくてたまらないんだった。

 

ずっと忘れていた感情を思い出させてくれて、ありがとうございます。とても強烈な読書体験でした。人生のターニングポイントになったと感じています。

これからは、嘘のない文章活動をしたい。

なによりも、自分に誠実な生き方をしたいと思います。

 

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20200531読了